街の賑やかな大通沿いから、少し離れた何の変哲も無い裏路地。
ただ、あると言えば古いレンガを敷き詰めらた細い道と
その周りに所狭しに建てられたアパートの、住民が干している洗濯物だけだった。

風が吹くたびに、洗濯ばさみだけでしか固定されていない洗濯物が
ゆらゆらと宙を仰ぐ。

今日もいい天気ですね…。

アパートとアパートの間から少ししか見えない青い空を仰ぎながら
いつもどうりの帰宅路をフロイラインは歩く。

そんな極有り触れたレンガの細道に、ポツリと赤く浮かび上がるものがあった。
近づくと真紅の赤いバラが一輪、忘れられたように落ちている。

「なんでこんなところに?」
真紅のバラはレンガの細道にはあまりにも馴染まない。
フロイラインは、地面からバラを大事そうに拾いあげると、おそるおそるバラに顔を近づけた。
「いいにおい…!」

仄かに香るバラの香りがフロイランの鼻孔をくすぐり ほんの僅かに頬が緩むが、すぐにもとに戻る。

落し物かしら?
そう思いはじめて辺りを見回すと5.6歩ほど離れた場所にまた、ポツリ浮かび上がる赤色。
小走りで近づいて拾い上げた。
そのバラからさほど遠くないところに一輪。
レンガの細道の奥に進むにつれフロイラインの片手には一輪、また一輪と赤いバラが増える。

「あれ…?ここで行き止まりですわ…。」
それまで続いていたレンガ道が突然行き止まり、同時に赤いバラも姿を消した。

行き場の無い視線をきょろきょろと彷徨わせると
大人一人やっと入れるか入れないかぐらいのアパートの隙間に無造作に落ちているバラを見つける。
「あった…!」
いつのまにかバラを拾う事が楽しくなっていたフロイラインは暗がりな隙間に何のためらいもなく足を進めた
そこはアパートの影で太陽の光は遮られ、トンネルの出口のように明かった。
フロイラインがバラを拾いながら進むにつれて徐々に明るくなっていく。

「ふぅ…ようやくあれで最後ですわ。」
最後のバラは隙間の出口から幾分か離れた場所にあった。
隙間から抜け出すと、まぶしい太陽に反射的に目を細める。

パタパタと小走りでバラに近づくと、真正面にフラワーワゴンに花を積み込んでいる青年が目に飛び込んだ。
「うん、これぐらいかな?」

青年の腕にはフロイラインが腕に抱えている同じ色のバラがあり、一目でこのバラの持ち主だと分かった。

「あれ…今日のバラってこんなに少なかったかな?」
ふいに青年が後ろを振り返り、バチリとフロイラインと目が合う。

「あ、もしかしてそのバラ…」
「あの…コレ路地裏に落ちていましたわ。」
「え、路地裏…?もしかして僕、抜け道通って来ちゃったから途中で落としたんだ…」
あの抜け道は僕ぐらいしか使わないから。
青年はクスクスと苦笑いしながら、「見つけてくれてありがとう」とフロイラインに微笑んだ。


「えっと…それでわ、私はこれで失礼しますわ」
ズイと一歩青年に近づくと、それまで抱えていたバラの束を渡す。
踵を返し来た道を戻ろうとしたフロイラインに後ろから呼び止める声がした。

「わわっ!ちょっと待って!僕、ゼフィルスって言うんだけど…僕のお店でお茶なんてどうかな?」
「お茶…?」
「うん、僕すぐそこのお店で雑貨屋さん営んでいるんだ!花を拾ってもらったんだからお礼しないと。」
「えーっと、じゃあ…ちょっとだけ。」
「決まり!とっておきのお茶、用意するから!」

カランカラン―。雑貨屋に入ると真紅のバラと同じバラの匂いがした気がした。





レンガの抜け道へ


  道標は真紅のバラ。










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西条せんた様宅フロイラインちゃんをお借りしました!
頂いた漫画のちょっと前辺りを勝手に想定して書いてみましたっ←
フロイラインちゃんはお花がすごく似合う子ですし かわいらしい子なので、書いててすっごく楽しかったですっ!!
好き勝手書いてしまってスミマセ((
そして久しぶりに文章を書いたので文法とか表現とか雑で申し訳ないです…。
2009.07.22











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