雨
色
ド
ロップ
しとしとと音を立てて降る雨…
また今日も、盗みをしてしまった…。
本当は暖かい家庭が恋しいだけなのに――。
本当は 普通の女の子でありたいだけなのに―――。
「はぁ…嫌な雨…」
ポツンと呟いたその少女、ブラックドッグのギムレットは
紫色のタンクトップにアイボリー色のタンパンを履いただけの 質素な格好、
髪は少し暗い色の翠で 瞳も同じような色。髪を右側で一つに結っていた
ダレが見ても、男の子のような 容姿であった。
降り続ける雨をため息をつきながら、窓の外からボーっと見つめていた・・・
周りに 住宅街がないからなのであろうか…?
シトシトと音を立てて 降り続ける雨が、より一層 寂しく聴こえた。
彼女は町から少し離れている 小山の山小屋に ひっそりと隠れるように住んでいた。
身を潜めるように… 誰かから逃げるように… 隠れるように…
何故かと言うと、肉親がいない彼女は自分の生活を営むために、
島の悪い住人を組んでは、盗みをしていたのだ。
生まれつき 瞬発力や動体視力、命中力が 素晴らしく才能が備わっていた彼女は。
ソレを利用して、ナイフをダーツの用に投げて 相手を攻撃することに 優れていた。
その 技術を買われて、島の悪人と、性別を誤魔化して、利用されいているのだ…。
そして、己を守るために誰かを傷つかせたことは
幾度となくある…。
よく、雨の降る日に 思い出してしまうのだ…
誰かを傷つけた痛みを…。泣き叫ぶ様に 痛いこの思いを。
まるでコノ雨は 私の涙のようだ…
いつも、どんなときでも我慢してきた 涙が コノ雨
そんなことを思っていると、あっと言う間に日が暮れて。
雨が止んだ綺麗な夜空には 少し欠けた月が昇っていた―――
「コンコン」
山小屋のドアから、ドアをノックする音が聞こえた。
(あぁ…また盗みか…。)
嫌そうな顔をして、ギムレットがドアを開けると、
いつもどうり、悪人がいたのだ…ただ、少し違っていたのはその人数が
いつもよりも 数倍多いのだ。
そして一人の男がこういった。
「海賊船に乗り込むぞ。」と
やつ等の説明によると、ココ数日前に 『ブラド海賊団』と言う 大規模な海賊団が
この島で、出航の準備を整えているようだ。
“海賊団”と言うコトなので、 お宝も きっと持ってるに違いない。
だから、夜の間に 船を襲って 財宝を手中に収めたいと考えているのだ。
そして、その海賊団には 何故か“ブラックドッグ”しかいない・・・。
そこで 彼等の中で唯一種族がブラックドックな
ギムレットに、忍び込んでもらおうと言う訳だ…。
(海賊団だからと いって、本当に財宝があるのだろうか?)
そう思いながらも、断る訳にはいかなかった。
船内の情報と、地図を渡されて、 ギムレットは夜の闇と共に忍び込んだ。
船内の構図は、凄く複雑でもなく、また簡素なものでもなかった。
大型な船だが、各団員の部屋はちゃんと有り、とても立派だ。
彼等の指示は、コノ船の中の 女船長の部屋にある 財宝を奪うことだ、出来るだけ 見つからないように
もし、見つかった場合は――…。
"殺れ" そう言われたのだ。
(……確かこの辺りだったと 思うけど…。)
辺りをキョロキョロ見回しながら、ギムレットは、ドアの目の前に居た。
人を殺さなくて済むように…できるだけ、音を立てずに 彼女は 扉を開け、中の様子を覗いた。
部屋の中は、薄暗くて人の気配は全く感じられなかった。
ただ、簡素なテーブルの上に 綺麗な色の飲みかけのカクテルがおいてあるだけだった。
「やつ等が言うには…女船長がいるはずだけど…?」
辺りを見渡すが、やはり 人の気配はない ベットもぬけの殻だ
――そのとき、ふいに後ろから かわいらしい女の子の声がした。
「こんな 夜中にどうしたのー? 私に何かようかな?」
反射的に 後ろを振り向くと、瑠璃色の髪を後ろで結んでいる少女が 立っていた。
彼女も船員の一員なのだろうか? 種族はブラックドッグであった。
「確かに、人の気配は無かったはずなのに…ッ!! お前はダレだッ?!」
威嚇をしながらギムレットは 怒鳴るように、言った。
「ん? 気配を消すなんて簡単だよー? 私はせれなーで、この海賊団の船長なんだッ
それはそうと… 私に何か用?」
やわらかい物腰といい、雰囲気といい、全てがギムレットと正反対だ。
(こいつが例の女船長・・・バレたからには、殺るしかない)
そう思うと、足の震えが止まらない… 心臓の鼓動が止まらない…
感情を 押し殺すと同時に、ギムレットは隠してあった ナイフを取り出した。
「俺は、ギムレット…この船にある 財宝を奪いに来たんだ!! 邪魔をするのなら、お前を攻撃する…!!」
ナイフを取り出すと、その刃先を せれなーでに向け、いつでも攻撃が出来るような体制に入った。
「ここには財宝は ないんだけどなー…でも…言っても無駄そうだね…。」
そうせれなーでが言った直後に、ギムレットは2本のナイフを同時に投げ、せれなーでを攻撃した。
しかし…"キン"と金属がぶつかる音がした、せれなーでは短剣で 彼女の投げたナイフを弾き飛ばしたのだ。
「急所を狙ったはずなのに…次はどうだ…!!」
今度は、手に持つナイフの数を4本に増やし、放った。
しかし、それもまた いとも簡単に 弾き飛ばされたのだ。
「こんなのナイフ軌道を読めれば、いくらでも弾き飛ばせるよ?さてっと…ちょっと痛いかも知れないけど 我慢してね?」
そういうと、せれなーでは『雷』の呪文を唱え始めた。
「/thunder!!!」
彼女がそう叫ぶと同時に、腕に「ビリッ」と激しい激痛が走った。
「―――――ッ痛う…」
痛みで、腰が抜けて ギムレットはその場に 立つことができなく、ペタンと座り込んだ。
幸い傷口からは血がでてなかった、きっと手加減して攻撃したのだろう
「ねぇ、どうしてこんなことしたの?」
ふと顔を上げると、せれなーでが不思議そうに 聞いてきた。
答れるはずがなかった・・・でも何故か言葉がスラスラと口からこぼれてきたのだ。
「俺は… 俺はッ、この島の悪人どもに利用されて 盗みをやらされてたんだ…親も、兄妹もいない俺には
こうすることしか 出来なかったんだ……。」
どうしてだろう? 言葉を重ねるたびに 涙がこぼれるように流れてきた。
今まで グッっと堪えて来た涙が 雨のように目から流れ出してきた…。
「そっか… じゃあさ…一緒に海賊団 やらない?」
あまりの唐突さに 思わず、耳を疑ってしまった。
「名前はギムレットだったよね…?じゃあギムちゃんでッ!
ギムちゃんもブラックドッグだし、私達と一緒に旅しよう〜♪」
そういった せれなーでの顔は本気だったし、凄く嬉しそうだった。
「な、いったい何を?! 仮にも俺は、あんたを襲いに来たんだぞ?!」
そういうと せれなーでは ムゥっとした表情で
「ギムちゃんは全然悪くないよ! 悪いのは悪人でしょ? それに………。」
「それに…?」
「ギムちゃんはずっと辛い思いしてたんだよね…? 私もその気持ち、痛いほど分かるよ…
だから、ほっとけなくってさッ…泣きたい時には 涙を殺さないでいいんだよ? 素直に泣かないと♪」
彼女がそう言ったあと、また雨が降ってきた…。また、涙が止まない…けれど…。
今度は 嫌な雨じゃない…とても綺麗でキラキラした雨だった。
雨って綺麗だよね? ココロを洗い流すようで――。
この世の汚いものを 洗い流すようで――――。
雨が上がれば虹が見える、雨と言うのはソノ前触れ
雨色ドロップ・・・ この話は小さな小さなビンに あまーく閉じ込められたドロップのように…。
後日、ギムレットはその島に 姿を現さなくなった。
船に乗って ブラック海賊団として入団したのだ・・・。
-END-
後書
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半年以上昔の作品を、リメイクして展示してみました。 ギムレットのチーム内にいるせれなーで船長との出会いを書かせていただきました。 せっかくの記念すべき絡み小説なのに、誤魔化しているところがいっぱいで…(汗 何だかな…どなたか文才を恵んでください(切実) 2008/03/24.ドクキノコ